家賃が自分ではなく大家に直接振り込まれる制度
仕事を失って家賃が払えないとき、家賃相当額を支給する制度があります。お金は本人ではなく、貸主や不動産会社に直接振り込まれます。離職した人だけの制度だと思われがちですが、収入が減った人も、自営業を続けている人も対象になり得ます。一方で資産要件があり、求職活動の頻度も軽くありません。順に整理します。
どんな制度か
住居確保給付金は、離職や減収で住まいを失うおそれがある人に、家賃相当額を支給する制度です。生活困窮者自立支援制度の一部で、窓口は市区町村の自立相談支援機関です。ハローワークではありません。
制度の骨格
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給されるもの | 家賃相当額(上限あり) |
| 支払われる先 | 入居住宅の貸主など。神戸市は「入居住宅の貸主などに直接振り込みます」としています |
| 期間 | 3か月を原則とし、3か月を限度に2回まで延長(最長9か月) |
| 窓口 | 市区町村の自立相談支援機関(くらし支援窓口・生活自立支援センター等) |
| 条件 | 収入要件・資産要件・求職活動等の要件をすべて満たすこと |
本人の口座に振り込まれないため、生活費として使うことはできません。あくまで家賃を止めないための制度です。
離職者だけの制度ではない
最も知られていないのがここです。神戸市は対象を「離職等の日から2年以内の方」だけでなく、「就業している個人の給与その他の業務上の収入を得る機会が当該個人の責めに帰すべき理由、都合によらないで減少し、当該個人の就労の状況が離職又は廃業の場合と同等程度の状況にある方」としています。
つまり働いていても、自分のせいでない理由で収入が大きく減っていれば対象になり得ます。さらに福岡市は、自営業者について求職活動とは別のルートを設けています。
被雇用者と自営業者で要件が違う(福岡市の案内より)
| 区分 | 毎月の要件 |
|---|---|
| 被雇用者 | ハローワーク等で月2回以上の職業相談/生活自立支援センターで月4回以上の面談/原則週1回以上の応募または面接 |
| 自営業者 | 経営相談先での月1回以上の相談/センターで月4回以上の面談/月1回以上、業務上の収入を得る機会増加の取り組み |
自営業を畳まなければ受けられない制度ではありません。事業を続けながら、経営相談を受ける形で要件を満たす道があります。
収入の基準
世帯全体の収入が基準額以下であることが要件です。基準額は世帯人数で決まります。
基準額(神戸市・福岡市とも同額)
| 世帯人数 | 基準額 |
|---|---|
| 1人 | 9.2万円 |
| 2人 | 13.9万円 |
| 3人 | 17.2万円 |
| 4人 | 21.4万円 |
| 5人 | 25.5万円 |
| 6人 | 29.7万円(神戸市の案内) |
収入基準額は「基準額+家賃額(上限額まで)」です。神戸市は単身12.4万円、2人17.8万円、3人22.4万円という具体額を示しています。
支給額の考え方は「基準額+実際の家賃額-世帯全体の収入合計」です(神戸市)。つまり収入が0円なら上限額まで、収入があればその分だけ減ります。全員が上限額をもらえるわけではありません。
資産の要件
見落とされやすいのがこちらです。預貯金があると受けられません。
金融資産の上限(神戸市・福岡市とも同額)
| 世帯人数 | 金融資産の合計 |
|---|---|
| 1人 | 55.2万円以下 |
| 2人 | 83.4万円以下 |
| 3人以上 | 100.0万円以下 |
神戸市は「基準額×6倍(ただし100万円を超えないものとする)以下」と説明しています。基準額の6倍という形なので、世帯人数で自動的に決まります。
この水準は、「貯金が尽きてから申請する制度」であることを意味します。退職金が入った直後は要件を満たさないことがあります。逆に言えば、手元が薄くなってからでは家賃の滞納が始まっているので、見通しが立った時点で早めに窓口へ相談するのが実務的です。
上限額は市区町村で違う
基準額と資産要件は全国共通ですが、支給の上限額は市区町村で違います。住宅扶助の基準額に連動しているためです。同じ単身世帯でも、次のように差があります。
支給上限額の比較
| 世帯人数 | 神戸市 | 福岡市 |
|---|---|---|
| 1人 | 40,000円 | 36,000円 |
| 2人 | 48,000円 | 43,000円 |
| 3〜5人 | 52,000円 | 47,000円 |
| 6人 | 56,000円 | 50,000円 |
| 7人以上 | 62,000円 | 56,000円 |
他の市区町村の金額をここから推測することはできません。ご自身の市区町村の公表額を必ず確認してください。家賃が上限を超える場合、超えた分は自己負担です。
求職活動の要件は軽くない
「もらえるかどうか」より、「受け続けられるかどうか」で詰まる制度です。神戸市は次の3つを挙げています。
被雇用者に求められる毎月の活動(神戸市の案内)
- 月4回以上、くらし支援窓口の相談支援員の面接等の支援を受けること
- 月2回以上、公共職業安定所等で職業相談等を受けること
- 原則週1回以上、求人先への応募を行うまたは求人先への面接を受けること
週1回の応募は、体調が悪い時期には現実的でないことがあります。要件を満たせないと支給が止まります。体調の問題で求職活動ができない状態であれば、この制度ではなく傷病手当金の継続給付や、雇用保険の受給期間の延長のほうが先に検討すべき制度になります。
状況ごとの考え方
まだ在職しているが、シフトが半分に減った
自営業で売上が落ちた
退職金が振り込まれたばかり
家賃が上限額より高い
すでに家賃を滞納している
体調が悪くて求職活動ができない
会社とのやりとりが進まないとき
離職票が出ない、退職日が決まらないと、給付の手続きも止まります。会社とのやりとりを自分で進めるのが難しい場合は、相談できる窓口があります。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 法律事務は弁護士のみが行えます
- 相談は無料
申請の順序
この順に動く
- 市区町村の自立相談支援機関を調べるハローワークではありません。「くらし支援窓口」「生活自立支援センター」など名称は市区町村で違います。
- 上限額と基準額を確認する基準額と資産要件は全国共通ですが、上限額は市区町村で違います。自分の家賃が上限に収まるかを先に見ます。
- 金融資産の額を確認する単身55.2万円、2人83.4万円、3人以上100万円が上限です。ここを超えていると申請しても通りません。
- 窓口で説明を受ける神戸市は「区役所・支所内のくらし支援窓口で制度や手続きの流れについて説明を受けてください」としています。申請書だけ出す制度ではありません。
- 書類をそろえる福岡市は、申請書・本人確認書類・離職や減収の確認書類・収入額確認書類・資産確認書類(預貯金通帳)・賃貸借契約書・貸主が記入する書類等を挙げています。貸主に書いてもらう書類がある点に注意してください。
- ハローワークで求職申込を行う被雇用者の場合、ハローワーク等での求職申込と職業相談が要件です。窓口の指示に沿って進めます。
- 毎月の活動を続ける面談・職業相談・応募の回数が要件です。満たせないと支給が止まります。
よくある取りこぼし
離職していないと使えないと思い込む
自分の責めによらない減収で、就労の状況が離職と同等程度なら対象になり得ます。在職のままでも相談できます。
自営業だから対象外だと思う
福岡市は自営業者向けの要件(経営相談・収入増加の取り組み)を別に定めています。廃業が前提の制度ではありません。
貯金を使い切ってから相談する
資産要件は上限であって下限ではありません。単身55.2万円以下なら申請できます。滞納が始まる前のほうが選択肢が多く残ります。
上限額を他の市区町村の数字で見てしまう
上限額は市区町村で違います。神戸市の単身40,000円に対し福岡市は36,000円です。必ず自分の市区町村の公表額を見てください。
本人の口座に振り込まれると思っている
貸主などに直接振り込まれます。生活費には使えません。
求職活動の回数を軽く見る
月4回の面談、月2回の職業相談、原則週1回の応募が要件です。続けられないと支給が止まります。
ハローワークに申請しに行く
申請窓口は市区町村の自立相談支援機関です。ハローワークは求職活動の要件を満たすために使います。
よくある疑問
いくらもらえますか。
離職していなくても対象になりますか。
自営業を続けたままでも受けられますか。
貯金がいくらまでなら対象ですか。
どのくらいの期間もらえますか。
お金は自分に振り込まれますか。
どこに申請しますか。
毎月何をしなければなりませんか。
家賃が上限額より高い場合はどうなりますか。
必要な書類は何ですか。
すでに滞納しています。過去の分も出ますか。
体調が悪くて求職活動ができません。
→ 運営元の違い/離職理由コードで決まる3つのこと/離職票が届かないとき/辞めたあとに使える給付金/退職後の傷病手当金
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