コードは1つ。そこから3つの制度が同時に動く
離職票に書かれる「離職理由コード」は、失業給付の話だと思われています。実際には、国民健康保険料と国民年金の保険料にも直結します。ところがハローワークは雇用保険のことしか説明せず、市区町村の国保の窓口は国保のことしか説明せず、年金の窓口は年金のことしか説明しません。3つがつながっていることを、誰も一度に教えてくれません。ここではそのつながりを整理します。
コードはどこに書いてあるか
離職理由コードは、次の2つの書類で確認できます。
コードが載っている書類
| 書類 | 誰から受け取るか | いつ手元に来るか |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者離職票-2 | 会社(会社が手続きし、本人へ交付されます) | 退職後、会社の手続きを経て届きます |
| 雇用保険受給資格者証/受給資格通知 | ハローワーク | 求職の申込みと受給の手続きをしたあと |
国民健康保険料の軽減を申請するとき、多くの市区町村が求めるのは離職票ではなく、ハローワークが出す受給資格者証または受給資格通知のほうです。
ここが順序の分かれ目です。離職票が届いた時点では、まだ国保の軽減は申請できないことがあります。先にハローワークで手続きをして、受給資格者証(または受給資格通知)を受け取ってから市区町村へ行く、という順番になります。
対象になるコード
国民健康保険料の軽減の対象となるコードは、複数の自治体が同じ番号を公表しています。
軽減の対象となる離職理由コード(東京都新宿区・渋谷区の公表内容より)
| 区分 | コード |
|---|---|
| 特定受給資格者 | 11・12・21・22・31・32 |
| 特定理由離職者 | 23・33・34 |
この区分と番号は、2つの区で記載が一致しています。ただし取り扱いは市区町村が定めるため、お住まいの市区町村の一覧で確認してください。
おおまかには、倒産・解雇・雇止め・退職勧奨など「自分の意思で選んだとは言いがたい離職」がここに入ります。逆に、いわゆる自己都合退職はこの番号には入りません。
動く3つの制度
同じ1つのコードが、別々の窓口で使われる
国民健康保険料(市区町村の国保の窓口)
国民年金保険料(年金事務所・市区町村の国民年金の窓口)
雇用保険の基本手当(ハローワーク)
3つとも、窓口も担当部署も別です。ひとつの窓口で全部の手続きが終わることはありません。自分で3か所に行く前提で考えてください。
① 国民健康保険料の軽減
会社の健康保険をやめて国民健康保険に入ると、保険料は前年の所得をもとに計算されます。働いていた年の所得で計算されるため、収入がなくなった年に、いちばん高い保険料の請求が来ます。これを緩めるのがこの軽減です。
軽減の内容(新宿区・渋谷区の公表内容より)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何をするか | 失業した本人の前年の給与所得を100分の30として、国民健康保険料を算定する |
| ほかに効くもの | 高額療養費等の所得区分の判定にも、同じ扱いが使われる |
| 期間 | 離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末まで |
| 年齢 | 離職日時点で65歳未満であること |
| 必要書類 | 雇用保険受給資格者証または受給資格通知、本人確認書類 |
軽減されるのは失業した本人の給与所得の部分です。同じ世帯にほかに所得がある方がいる場合、その分は軽減されません。
見落とされやすいのが「高額療養費等の所得区分の判定にも使われる」という点です。保険料が下がるだけでなく、医療費の支払いが高額になったときの自己負担の上限も下がる可能性があります。退職後に治療が続く方にとっては、保険料以上に大きい差になることがあります。
期間の書き方にも注意してください。「離職日の翌日の属する月から、その月の属する年度の翌年度末まで」です。年度で区切られるため、いつ辞めたかによって、軽減される長さが変わります。年度の初めに近いほど長く、年度末に近いほど短くなります。
② 国民年金の特例免除
国民年金の保険料の免除は、通常は前年の所得で審査されます。ところが失業した場合には特例があります。日本年金機構は次のように示しています。
失業・倒産・事業の廃止などの事実を確認できたときは、失業等した方の前年所得にかかわらず、免除・納付猶予を受けられる
前年に十分な所得があっても、失業を理由に申請できるという点が要点です。必要書類は、雇用保険被保険者離職票のコピー、または雇用保険受給資格者証・受給資格通知のコピーです。
免除を考えるときに知っておくこと
- 免除には全額・4分の3・半額・4分の1の区分がある
- 全額免除の期間も、保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1(税金分)は受け取れる
- 承認を受けた期間の保険料は、10年以内であれば後から納付(追納)できる
- 未納のまま放置した場合と、免除を受けた場合とでは、将来の年金額も障害・遺族年金の扱いも変わる
「払えないから放っておく」と「免除を申請する」は、まったく別の結果になります。未納は年金額に反映されませんが、免除された期間は一定の割合で反映されます。手続きをするかどうかだけの差です。
さかのぼりにも期限があります。日本年金機構は、申請できるのは「保険料の納付期限から2年を経過していない期間(申請時点から2年1か月前までの期間)」としています。免除の年度は7月から翌年6月までで区切られるため、気づくのが遅れるほど、申請できる期間が短くなります。
③ 雇用保険の給付そのもの
もっとも知られている部分ですが、確認しておきます。ハローワークが公表する所定給付日数は、区分によって幅が違います。
所定給付日数の幅(ハローワークの公表内容より)
| 区分 | 日数の幅 |
|---|---|
| 特定受給資格者および一部の特定理由離職者 | 年齢と被保険者であった期間により 90日〜330日 |
| それ以外の離職者(自己都合等) | 年齢にかかわらず 90日〜150日 |
個別の年齢・期間ごとの日数は改定されるため、ここでは幅のみ示します。自分が何日になるかは、受給の手続きのときにハローワークで確認してください。
加えて、自己都合の場合には給付が始まるまでの期間が置かれます。コードが変われば、受け取れる金額も、受け取り始める時期も変わります。
確認の順序
この順番で動くと、二度手間になりません
- 会社から離職票が届いたら、離職理由の欄をすぐ見るコードと、離職理由の記載を確認します。この時点で違和感があれば、次のハローワークで伝えます。
- ハローワークで求職の申込みと受給の手続きをする離職理由の判断はハローワークが行います。ここで受給資格者証または受給資格通知が交付されます。
- 市区町村の国民健康保険の窓口へ行く受給資格者証(または受給資格通知)と本人確認書類を持参します。軽減は申請しないと適用されません。自動では下がりません。
- 同じ日に、国民年金の窓口も回る多くの市区町村で、国保と国民年金の窓口は同じ庁舎にあります。離職票または受給資格者証のコピーで、特例免除の申請ができます。1回で済ませてください。
- 翌年度の保険料の通知が来たら、軽減が入っているか見る軽減の期間は年度で区切られます。通知の金額が想定と違うときは、その場で問い合わせてください。
コードが違うと思ったとき
離職票に書かれた理由が、実際と違うことがあります。離職票には、離職理由について本人が意見を記載する欄があります。異なる場合はその旨を記載し、ハローワークに申し出てください。
申し出るときの考え方
会社の記載に納得できない
判断するのは誰か
何を持っていくか
結果が変われば、国保と年金もやり直せるか
よくある取りこぼし
軽減は申請しないと適用されないことを知らない
市区町村は、誰が非自発的失業者かを自動では把握できません。受給資格者証を持って申請して、はじめて計算し直されます。黙っていても下がりません。
離職票が届いた時点で国保の窓口に行ってしまう
多くの市区町村が求めるのは、ハローワークが出す受給資格者証または受給資格通知です。先にハローワークです。
年金は「払えないから放置」で済ませてしまう
未納と免除では、将来の年金額も、障害や死亡のときの取り扱いも変わります。失業を理由とする特例では前年の所得を問われません。申請だけはしてください。
免除のさかのぼりの期限を過ぎる
申請できるのは、申請時点から2年1か月前までの期間です。気づくのが遅れるほど、取り返せる範囲が狭くなります。
治療が続いているのに、高額療養費の区分が変わることに気づかない
国保の軽減は、高額療養費等の所得区分の判定にも使われます。医療費が続く方ほど、申請の効果が大きくなります。
辞め方を決める前に、確認しておきたいこと
離職理由の記載は、退職の進め方によって変わることがあります。まだ会社に何も伝えていない段階であれば、進め方から相談できます。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 法律事務は弁護士のみが行えます
- 相談は無料
退職代行を使った場合の扱い
誤解されやすいので、はっきり書いておきます。退職代行を使ったからといって、離職理由が会社都合になるわけではありません。また、使ったこと自体が離職理由の欄に書かれるわけでもありません。
離職理由は、実際に何があって辞めることになったかで判断されます。判断するのはハローワークです。退職の意思をどう伝えたか(自分で伝えたか、代行を通したか)は、その判断の中心ではありません。
退職代行を検討している段階で、やっておくとよいこと
- 退職を促されたやりとりがあるなら、記録を手元に残しておく
- 労働条件が実際と違っていたなら、示されていた書面を保管しておく
- 残業時間や勤務実態が分かる記録を、退職前に確保しておく
- 離職票が届いたら、理由の欄を必ず自分で読む
- 違うと思ったら、受け取ったうえでハローワークに申し出る
会社を離れたあとでは、社内にある記録には手が届きません。資料をそろえられるのは、まだ在籍しているあいだだけです。
よくある疑問
よくある疑問
自己都合で辞めました。国民健康保険料の軽減は受けられませんか。
軽減はいつまで続きますか。
扶養に入る場合も関係ありますか。
任意継続を選んだ場合はどうなりますか。
国民年金の免除を受けると、将来の年金は減りますか。
免除を受けた分を、あとから払えますか。
離職票がなかなか届きません。
受給資格者証がまだ出ていないのに、国保の保険料の納付期限が来ました。
3つの窓口を回るのが大変です。
65歳を過ぎて退職した場合はどうなりますか。
→ 運営元の違い/依頼前に用意しておくもの/離職票が届かないとき/辞めたあとに使える給付金
退職代行 総合ガイドの記事一覧
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