残業代は「記録が残っているか」で決まる
請求できるかどうかは、気持ちの強さではなく労働時間を示す記録が手元にあるかでほぼ決まります。辞めたあとに集めるのは難しくなります。在籍中に動いてください。
時効の考え方
賃金請求権には消滅時効があります。労働基準法第115条は賃金請求権の時効を5年としつつ、附則により当分の間は3年とされています。つまり、古い月のぶんから順に請求できなくなっていきます。
実務上の意味は単純です。迷っている間に、請求できる範囲が毎月削られていくということです。時効の起算点や個別の適用は事案によって異なるため、金額が大きい場合は早い段階で弁護士に確認してください。
未払い分の扱いを相談できるか確認する
交渉や請求まで踏み込めるかは運営元によって違います。まず対応範囲を確認してください。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 法律事務は弁護士のみが行えます
- 相談は無料
証拠になる記録
「働いた事実」と「その時間」を示せるものが必要です。会社の記録に頼れない場合でも、自分の側に残っているものが手がかりになります。
記録は「客観性」と「入手しやすさ」で強さが変わる
| 記録の種類 | 示せること | 入手しやすさ | 備考 |
|---|---|---|---|
| タイムカード・勤怠システムの記録 | 始業・終業の時刻 | 在籍中は容易/退職後は困難 | 写しを取れるうちに取る |
| 業務用PCのログイン・ログオフ記録 | 会社にいた時間帯 | 会社の管理下 | 開示を求める形になる |
| 業務メール・チャットの送信時刻 | その時刻に業務をしていたこと | 自分の受信箱にも残る | 内容ではなく時刻が意味を持つ |
| 交通系ICカードの入退場履歴 | 出社・退社のおおよその時刻 | 自分で取得できる | 直行直帰が多い職種では有効 |
| 手書きの業務日誌・自分のメモ | 日々の実態 | 自分で作れる | 毎日つけていれば補強材料になる |
| 給与明細 | 支払われた手当の内訳 | 自分の手元 | 何が支払われていないかの起点 |
1つで足りることは少なく、複数を突き合わせて時間を示すのが現実的です。
金額の見当をつける
正確な計算は事案ごとに異なりますが、考え方の骨格は共通しています。
残業代の計算の骨格
- ① 1時間あたりの賃金を出す月給(除外される手当を控除)÷ 1か月平均所定労働時間
- ② 割増率をかける時間外・深夜・休日で率が異なる
- ③ 未払いの時間数をかける記録から積み上げた時間
① × ② × ③ が、おおよその請求額の目安になります。除外できる手当の範囲や割増率は法令で定められており、個別の判断は専門家に確認してください。
「固定残業代(みなし残業)」が支給されている場合は、その手当が何時間ぶんに相当するのかが明示されているかを確認してください。相当時間を超えた分は、別途支払われる必要があります。
対応できる範囲を確認する
未払い分の請求まで扱えるかどうかは、依頼先の種類で変わります。
- 料金・対応範囲は各社公式サイトの公表値です
- 法律事務は弁護士のみが行えます
- 相談は無料
相談・請求の窓口
相談先ごとにできることが違う
| 窓口 | できること | 費用 | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| 労働基準監督署 | 法違反についての申告・指導 | 無料 | 明確な法違反があるとき |
| 総合労働相談コーナー | 相談・情報提供・助言 | 無料 | 何から手をつけるか分からないとき |
| 労働組合 | 団体交渉 | 組合による | 会社との話し合いが必要なとき |
| 弁護士 | 交渉・請求・訴訟 | 有料(相談無料の例あり) | 金額が大きい・争いになりそうなとき |
監督署は「行政指導」であり、個人の代わりに金銭を取り立てる機関ではありません。ここを取り違えると期待とずれます。
退職代行との関係
退職の連絡だけを代行する民間の業者は、未払い賃金の交渉や請求には踏み込めません。弁護士でない者が報酬を得る目的で法律事件について交渉することは、弁護士法第72条で禁じられているためです。
労働組合が運営する場合は、労働組合法に基づく団体交渉として会社と話し合うことができるとされています。金額が大きい、あるいは争いになる見込みがあるなら、はじめから弁護士に依頼するほうが結果的に早く済みます。
よくある失敗
辞めてから記録を集めようとする
社内システムにも書類にもアクセスできなくなります。証拠の確保は在籍中が原則です。
先に感情的なやり取りをしてしまう
記録が整う前に対立すると、資料の入手が難しくなります。順序は「記録→相談→請求」です。
時効を意識しないまま放置する
賃金請求権は当分の間3年とされています。古い月から順に請求できなくなります。
固定残業代を「残業代は出ない」と誤解する
相当時間を超えた分は別途支払われる必要があります。何時間ぶんかを確認してください。
よくある疑問
会社を辞めたあとでも請求できますか
タイムカードがない職場です
会社が「管理職だから残業代は出ない」と言います
労働基準監督署に行けば取り立ててもらえますか
退職代行 総合ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。