辞めても、
権利は変わりません
「辞めたら労災も終わりだ」と言われた。あるいは、そう思って言い出せずにいる。退職を人質にされているような感覚は、つらいものです。条文は、たった1行でそれを否定しています。
今日やること。辞める前と後で変わること
順番を確かめる
- ① 記録を、いまのうちに手元にそろえる勤怠・給与明細・作業の記録・やりとりのメール。辞めたあとは、会社の中の資料を見られなくなります。権利は消えませんが、資料は取りにくくなります。
- ② 事業主証明は、在職中のほうが頼みやすい退職後でも頼めますが、連絡そのものが重くなります。先に依頼しておくほうが、あとが楽です。→ 会社が証明しないとき
- ③ 退職日が決まったら、健康保険の切り替えを確認する労災の給付とは別に、健康保険の手続が要ります。
- ④ 請求できる期間を確認する療養補償給付・休業補償給付を受ける権利は2年です(労災保険法第42条)。障害補償給付・遺族補償給付は5年です。
条文は1行で答えている
「補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」
労働基準法 第83条第1項
「退職によつて変更されることはない」。打ち切るとも、減らすとも書かれていません。
同じ条の第2項は、「補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない」としています。だから、会社との話し合いのなかで「労災の分はこちらに渡せ」と言われても、応じられません。
辞めて変わること・変わらないこと
整理すると
| 退職しても変わらない | 退職で変わる | |
|---|---|---|
| 労災の給付を受ける権利 | 変わらない(労基法第83条第1項) | — |
| 請求する権利 | 変わらない。退職後も請求できる | — |
| 事業主証明 | 依頼できる | 連絡が取りにくくなる |
| 社内の資料 | — | 見られなくなる |
| 健康保険 | — | 切り替えの手続が要る |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。権利は残ります。手続の「やりやすさ」だけが変わります。
だから、辞めるかどうかを労災のために我慢して決める必要はありません。ただ、辞める前に資料をそろえておくほうが、あとが軽くなります。
「辞めるなら労災は取り下げろ」と言われたら
そう言われたら、その場で答えないでください。
労災の給付を受ける権利は、退職の条件にできるものではありません。第83条第2項が譲渡を禁じているとおり、会社との合意で処分できる性質のものとして扱われていません。
その場で言えること
- 「持ち帰って確認します」——これで十分です。即答しない
- 言われた内容を、日付つきで記録する(誰が・いつ・どう言ったか)
- 退職合意書にサインする前に、労働基準監督署に相談する
- 署名を急かされたら、急かされたことも記録する
会社の言い分に納得できないまま署名すると、あとで覆すのが難しくなります。1日置くだけで、選べる幅が変わります。
もう辞めてしまった人へ
遅くありません。退職後でも請求できます。
気をつけるのは期間です。労災保険法第42条は、療養補償給付・休業補償給付などを受ける権利は「これらを行使することができる時から二年」、障害補償給付・遺族補償給付は5年で時効にかかると定めています。
手元にある資料から始めてください。給与明細、通院の領収書、当時のメールやメッセージ。会社に連絡が取れなくても、労働基準監督署に相談できます。→ 会社が証明しないとき
状況別の考え方
療養中に退職勧奨を受けている
自分から辞めるつもりでいる
退職して1年以上たっている
会社がもう存在しない
退職金と引き換えに労災を取り下げると言われた
よくある取りこぼし
辞めたら打ち切りだと思っていた
退職によって変更されません(労基法第83条第1項)。
辞める前に資料を控えなかった
権利は残りますが、資料は取りにくくなります。
退職合意書にその場でサインした
持ち帰って構いません。急かされたことも記録してください。
時効を知らなかった
療養・休業は2年、障害・遺族は5年です(労災保険法第42条)。
会社が消えたら終わりだと思っていた
給付は国が行います。
退職後は証明を頼めないと思っていた
頼めます。取れないときの扱いは監督署で確認できます。
よくある疑問
退職後に症状が悪化しました。請求できますか
転職先に知られますか
失業保険と両方受けられますか
会社に損害賠償を請求したい
治療費を立て替えたままです
このサイトは、労災の手続きが実際にどう動くのかを、労働者災害補償保険法・同施行規則・労働基準法の条文で確かめて書いています。労災に当たるかどうかを決めるのは、会社ではなく労働基準監督署です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、本人の側から動かせる部分を書きます。病気やけがの症状・診断・治療には触れません。
確認に使った一次情報
- 労働者災害補償保険法 第7条(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)/第12条の8/第12条の4(第三者行為災害)e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険法施行規則 第23条(事業主の助力等)e-Gov法令検索
- 労働基準法 第75条(療養補償)/第76条(休業補償)/第83条(補償を受ける権利)e-Gov法令検索
- 健康保険法 第55条(他の法令による保険給付との調整)e-Gov法令検索
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認した条文です。労災に当たるかどうかの判断と、給付の決定は労働基準監督署が行います。条文で全国共通なのは、誰が請求するのか、事業主に何の義務があるのかまでです。
次の働き方を決めるのは、手続きが落ち着いてからで構いません
労災の手続と、転職するかどうかは切り離せます。急いで決めなくていい代わりに、どんな選択肢があるかだけ見ておくと、決めるときに迷いません。
- いま動かなくて構いません。どんな選択肢があるかを見るだけで終われます
- 在職中でも使えます。会社に知られる仕組みではありません
- 対応範囲は運営元により異なります。掲載内容は公式サイトの公表値です
労災ガイドの記事一覧
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