労災はひとつではない
条文は3つに分けている
「労災」とひとことで言いますが、法律は第7条第1項で3種類の災害を並べて書いています。どれにあたるかで、給付の名前も、最初の3日間の扱いも変わります。
本サイトは e-Gov法令検索で確認した条文を整理したものです。実際に労災と認められるかどうか・給付の種類・金額は、労働基準監督署の調査と認定によって決まります。請求と最終的な判断は、勤務先を管轄する労働基準監督署にご確認ください。本サイトは病気やけがの症状・診断・治療については扱いません。傷病等級・障害等級の認定基準にも踏み込みません。
条文は3つに分けている
労働者災害補償保険法第7条第1項は、保険給付を4つ挙げています。そのうち3つが災害の種類です。
第7条第1項が並べている保険給付
| 号 | 条文の言葉 | 何にあたるか |
|---|---|---|
| 一号 | 労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(業務災害) | 仕事が原因のけが・病気 |
| 二号 | 複数事業労働者の二以上の事業の業務を要因とする負傷等(複数業務要因災害) | 2つ以上の会社の仕事が合わさって起きたもの |
| 三号 | 労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(通勤災害) | 通勤が原因のけが |
| 四号 | 二次健康診断等給付 | 健診の結果にもとづく給付 |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で労働者災害補償保険法第7条第1項を確認しました。二号は括弧書きで「前号に掲げるものを除く」としています。一号にあたるなら二号にはなりません。
3つは並んだ別のカテゴリーです。どれにあたるかで給付の名前が変わります。業務災害なら「休業補償給付」、複数業務要因災害なら「複数事業労働者休業給付」、通勤災害なら「休業給付」というように、条文が別の名前を付けています。
第7条第1項をそのまま読む
「この法律による保険給付は、次に掲げる保険給付とする。一労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡(以下「業務災害」という。)に関する保険給付」
「二複数事業労働者(これに類する者として厚生労働省令で定めるものを含む。以下同じ。)の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)に関する保険給付(前号に掲げるものを除く。以下同じ。)」
「三労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡(以下「通勤災害」という。)に関する保険給付」
「業務上」の意味は条文に書かれていない
第7条第1項第一号は「業務上の負傷、疾病、障害又は死亡」としています。しかし「業務上」がどういう意味かは、この条文にも、ほかの条文にも定義がありません。
これは「決まりがない」という意味ではありません。条文が言葉の意味を定義せず、実際の判断を下の層に委ねている、ということです。
層で見る
労災の判断がどの層にあるか
| 層 | 何が置かれているか | 本サイトの扱い |
|---|---|---|
| 法律 | 労災保険法。3つの災害の区分、給付の種類、第四日目から、一年六箇月 | 本サイトが扱う範囲 |
| 省令 | 施行規則。日常生活上必要な行為の5類型、傷病等級など | 条文が委任している先として示す |
| 告示・行政解釈 | 「業務上」の判断のしかた、逸脱・中断にあたらない行為の範囲 | 存在は示すが、内容は断定しません |
| 個別の認定 | 労働基準監督署の調査と認定 | 扱いません |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。条文に書かれていないことは、下の層に置かれています。「条文にない=決まりがない」ではありません。
このサイトの記事
条文の言葉と、実務の取り扱いがずれやすいところを4つ取り上げています。
4つのページ
- 通勤の「逸脱・中断」第7条第3項。寄り道のあとの移動も、原則として通勤ではなくなります → 逸脱・中断はその後の移動にも及ぶ
- 休業補償が「第四日目から」の理由第14条と労働基準法第76条・第84条の組合せ → 最初の3日間は誰が払うのか
- 2つの会社で働く人第7条第1項第二号・第20条の2。給付の名前が全部違います → 複数業務要因災害という別カテゴリー
- 療養1年6か月の意味第12条の8第3項。経てば年金、ではありません → 2つの条件を判定する日
状況別の考え方
仕事中にけがをした
通勤の途中でけがをした
2つの会社で働いている
休んだ最初の3日分が出ないと言われた
1年半たっても治らない
よくある取りこぼし
労災はひとつの制度だと思っていた
第7条第1項は3種類の災害を並べています。給付の名前も別です。
「業務上」の定義が条文にあると思っていた
定義はありません。だからといって基準がないわけではなく、行政解釈と個別の認定によります。
通勤災害と業務災害で扱いが同じだと思っていた
最初の3日間の扱いが違います。 → 最初の3日間
2つの会社の仕事は合算されないと思っていた
第7条第1項第二号が複数業務要因災害を定めています。
1年6か月たてば自動的に年金だと思っていた
第12条の8第3項は2つの条件を求めています。
寄り道から戻れば必ず通勤に戻ると思っていた
条文は原則として「その後の移動」も通勤から外しています。例外は施行規則第8条の5類型です。
よくある疑問
どこに請求しますか
会社が労災だと認めてくれません
アルバイトやパートも対象ですか
健康保険と労災はどちらを使いますか
傷病等級や障害等級はどこで決まりますか
確認に使った一次情報
- 労働者災害補償保険法 第1条/第7条/第12条の8/第14条/第20条の2e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険法施行規則 第8条(日常生活上必要な行為)e-Gov法令検索
- 労働基準法 第76条(休業補償)/第84条(他の法律との関係)e-Gov法令検索
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認した条文です。条文に書かれていない部分(「業務上」の意味、逸脱・中断にあたらない行為の範囲、傷病等級の中身など)は、省令・告示・行政解釈と、労働基準監督署の個別の認定によります。本サイトでは断定しません。
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