寄り道のあとは原則として通勤ではない
通勤災害でつまずきやすいのが第7条第3項です。条文は「逸脱又は中断の間」だけでなく「その後の」移動も通勤から外しています。そして例外の置き方が二重になっています。
本サイトは e-Gov法令検索で確認した条文を整理したものです。実際に労災と認められるかどうか・給付の種類・金額は、労働基準監督署の調査と認定によって決まります。請求と最終的な判断は、勤務先を管轄する労働基準監督署にご確認ください。本サイトは病気やけがの症状・診断・治療については扱いません。傷病等級・障害等級の認定基準にも踏み込みません。
条文をそのまま読む
まず第7条第2項で、通勤の定義があります。
「前項第三号の通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」
その上で第3項です。
「労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない。」
続くただし書です。
「ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。」
3つの段階で読む
条文が作っている段階
- ① 逸脱・中断があった移動の経路を外れた、または移動をやめた
- ② 原則:その後も通勤ではない条文は「当該逸脱又は中断の間及びその後の…移動は、通勤としない」としています
- ③ 例外:省令の5類型なら「当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない」。つまり寄り道している間は対象外のままで、合理的な経路に戻ったあとの移動は通勤として扱われます
②と③の関係が要点です。例外にあたっても、寄り道をしているその時間だけは通勤から外れたままです。あてはまるかどうかの認定は労働基準監督署が行います。
省令が定める5つの類型
ただし書が委ねている「厚生労働省令で定めるもの」は、労働者災害補償保険法施行規則第8条にあります。
施行規則第8条(日常生活上必要な行為)
| 号 | 条文の言葉 |
|---|---|
| 一 | 日用品の購入その他これに準ずる行為 |
| 二 | 職業訓練、学校教育法第一条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であつて職業能力の開発向上に資するものを受ける行為 |
| 三 | 選挙権の行使その他これに準ずる行為 |
| 四 | 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為 |
| 五 | 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。) |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で労働者災害補償保険法施行規則第8条を確認しました。それぞれに「その他これに準ずる行為」という広がりがあります。個別にあてはまるかの判断は労働基準監督署が行います。
そもそも「逸脱・中断」にあたらない行為
ここを落とすと、条文だけを読んだ人は誤解します。
第3項は「逸脱」「中断」があったときの話です。ところが、移動の途中で行う行為のうち、ごく短時間のごく日常的なものは、そもそも「逸脱」「中断」にあたらないものとして扱われています。
条文の外にあること
- 何が「逸脱・中断」にあたるかは、条文に定義がない
- ごく短時間のごく日常的な行為は逸脱・中断そのものにあたらないと扱われている
- その範囲は行政解釈で示されており、条文にはない
- 個別にあてはまるかは労働基準監督署の認定による
「条文に書いていない=通勤から外れる」ではありません。逆に「条文に書いていない=必ず認められる」でもありません。本サイトではどの行為がどちらにあたるかを断定しません。労働基準監督署にご確認ください。
層で見る
通勤災害の判断がどの層にあるか
| 層 | 何が置かれているか |
|---|---|
| 法律 | 第7条第2項(通勤の定義)・第3項(逸脱・中断と、ただし書) |
| 省令 | 施行規則第8条(日常生活上必要な行為の5類型) |
| 行政解釈 | 何が逸脱・中断にあたらないか、「最小限度」「やむを得ない事由」の考え方 |
| 個別の認定 | 労働基準監督署の調査と判断 |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。法律は「厚生労働省令で定めるもの」と明示的に委任しています。条文の沈黙には理由があります。
状況別の考え方
帰りにスーパーへ寄った
寄り道から合理的な経路に戻ったあと
飲み会に行った
病院に寄った
親の介護に立ち寄った
ごく短時間の用事だった
よくある取りこぼし
寄り道した時間だけが対象外だと思っていた
条文は「及びその後の」移動も通勤から外しています。
寄り道から戻れば必ず通勤に戻ると思っていた
戻って通勤に復帰するのは、施行規則第8条の5類型にあたる場合です。
例外にあたれば寄り道中も守られると思っていた
ただし書は「当該逸脱又は中断の間を除き」としています。
5類型に入っていれば必ず認められると思っていた
条文は「やむを得ない事由」「最小限度」も求めています。
通勤の経路は自由だと思っていた
第2項は「合理的な経路及び方法により」としています。
条文にない行為はすべて逸脱だと思っていた
そもそも逸脱・中断にあたらない扱いのものがあります。労働基準監督署にご確認ください。
よくある疑問
「最小限度」はどのくらいですか
寄り道の時間の長さで変わりますか
2つの職場を移動する間は通勤ですか
単身赴任先と自宅の間は通勤ですか
通勤災害でも最初の3日は会社が払いますか
確認に使った一次情報
- 労働者災害補償保険法 第1条/第7条/第12条の8/第14条/第20条の2e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険法施行規則 第8条(日常生活上必要な行為)e-Gov法令検索
- 労働基準法 第76条(休業補償)/第84条(他の法律との関係)e-Gov法令検索
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認した条文です。条文に書かれていない部分(「業務上」の意味、逸脱・中断にあたらない行為の範囲、傷病等級の中身など)は、省令・告示・行政解釈と、労働基準監督署の個別の認定によります。本サイトでは断定しません。
通勤そのものを変える選択肢も、知っておく
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