提出を求められた書類が、そのまま14事項に当たることがある
面接での質問は身構えていても、書類の提出は事務手続きの顔をしてやってきます。「次の面接に進む前に、戸籍謄本を提出してください」——これは厚生労働省が挙げている不適切な指示の事例そのものです。何が該当し、何が該当しないのかを、注記の原文から整理します。
3つの注記
14事項の表に付いている注記を、原文のまま引きます。
(注1)「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します。
(注2)「現住所の略図等」は、住宅状況や生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります。
(注3)採用選考時において合理的・客観的に必要性が認められない「健康診断書」を提出させることを意味します。
注記の書き方が3つとも違います。ここを読み分けると、対応が変わります。
3つの注記の強さの違い
| 注記 | 書き方 | 読み取れること |
|---|---|---|
| (注1)戸籍謄(抄)本・本籍記載の住民票 | 「これに該当します」 | 該当すると言い切っている |
| (注2)現住所の略図等 | 「可能性があります」 | 該当しうる、という書き方 |
| (注3)健康診断書 | 「合理的・客観的に必要性が認められない」ものを意味する | 条件付き。必要性があれば別 |
この読み分けは、注記の文面から整理したものです。個別の判断は、ハローワーク・都道府県労働局にご確認ください。
戸籍謄本・戸籍抄本
注記は「提出させることはこれに該当します」と書いています。「これ」とは14事項の1つ目、「本籍・出生地に関すること」の把握です。
厚生労働省が挙げた不適切な事例の1つ目も、これでした。
次の面接に進む前に、戸籍謄本を提出してください
「次の面接に進む前に」という言い方に注意してください。選考の条件のように示されると断りにくくなります。ですが、これは厚生労働省が事例として挙げているものです。
住民票は「本籍が記載された」もの
ここは正確に読む必要があります。注記は「本籍が記載された『住民票(写し)』」と書いています。
住民票の写しは、請求のときに「本籍の記載を省略する」ことができます。本籍が記載されていない住民票の写しは、注記が指しているものとは形が違います。
住民票の写しの2つの形
| 注記との関係 | |
|---|---|
| 本籍が記載された住民票(写し) | 注記が「これに該当します」と挙げているもの |
| 本籍の記載を省略した住民票(写し) | 注記の文面が指しているものではない |
ただし、住民票の提出自体に合理的・客観的な必要性があるかどうかは別の問題です。入社手続きで必要になる書類と、採用選考の段階で求められる書類は分けて考えてください。
入社が決まったあとに、社会保険や給与の手続きで住民票が要ることはあります。採用選考の段階で求められているのか、入社手続きなのか。この区別を確かめるのが先です。
現住所の略図
注記(注2)は、理由を2つ書いています。
「現住所の略図等」は、住宅状況や生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります。
略図を書くと、周辺に何があるかが分かります。それが「生活環境」の把握になり、また訪問の手がかりになる。だから14事項の(a)住宅状況と、(c)身元調査の両方に近づきます。
厚生労働省は身元調査についてこう書いています。
その情報には、真偽が不明なものや無責任な風評・予断・偏見が入り込んでいることが少なくありません。
健康診断書
(注3)だけが条件付きです。「合理的・客観的に必要性が認められない」ものを意味すると書かれています。
Q&Aはさらに踏み込んでいます。
採用選考時の健康診断(応募者に既往歴を確認する行為や健康状態の確認・告知書を提出させる行為なども含む。)は、その必要性を慎重に検討し、それが応募者の適性と能力を判断する上で合理的かつ客観的に必要である場合を除いて実施しないようお願いします。
「既往歴を確認する行為」も含まれます。診断書の提出だけでなく、口頭で持病を聞くことも同じ枠に入っています。詳しくは 健康診断と既往歴 で整理します。
厚生労働省の履歴書様式例
厚生労働省は、履歴書の様式例そのものを公表しています。
新規学卒者以外の応募者の場合は、「厚生労働省履歴書様式例」の使用を推奨しています。
厚生労働省が示している応募書類の様式
| 対象 | 様式 |
|---|---|
| 新規中学校卒業予定者 | 職業相談票(乙) |
| 新規高等学校卒業予定者 | 全国高等学校統一用紙 |
| 新規大学等卒業予定者 | 新規大学等卒業予定者用標準的事項の参考例、または厚生労働省履歴書様式例 |
| 新規学卒者以外(転職者など) | 厚生労働省履歴書様式例 |
出典:厚生労働省 公正採用選考特設サイト。様式例は同サイトから PDF(A4版・A3版)と Excel でダウンロードできます。
市販の履歴書には、14事項に触れる欄が残っているものがあります。厚生労働省の様式例を使えば、そもそも書く欄がありません。「書かなかった」ではなく「欄が無い」形にできます。
逆に、求められて当然のもの
すべての書類が問題になるわけではありません。職務遂行に必要なものは別です。
性質が違う書類
| 書類 | 位置づけ |
|---|---|
| 職務経歴書 | 適性・能力の判断に直接使う |
| 資格の証明(免許証・合格証など) | 求人条件に資格が含まれていれば必要 |
| 卒業証明書・成績証明書 | 学歴を要件にしている場合 |
| 在留資格の確認 | 採用選考時は口頭または書面。「在留カード」の確認は採用内定後(厚生労働省Q&A) |
在留資格については、厚生労働省が段取りを明示しています。選考段階で在留カードの提示を求める形は、この段取りとは異なります。
外国籍の方について、Q&Aは次のように書いています。
在留資格や資格外活動許可の有無等について、採用選考時は口頭または書面による確認とし、不法就労を助長することにならないよう、採用内定後に「在留カード」により就労可能であることを確認することが必要です。
応募書類の出し方を、担当者に確認しながら進める
エージェント経由なら、企業から求められた書類が通常のものかどうかを担当者に聞けます。
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- g
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求められたときの考え方
提出を求められたときの順序
- いつの段階で求められたかを確かめる採用選考の途中か、内定後の入社手続きか。ここで扱いが変わります。
- 何に使うのかを聞く「どの手続きで必要になりますか」と聞けば、合理的な必要性があるなら説明が返ります。
- 本籍の記載が要るかを確かめる住民票なら、本籍の記載を省略した写しで足りるかを聞けます。
- 求められた内容を記録するメールや応募サイトのメッセージは消さずに残してください。書面での指示は証拠になります。
- 迷ったらハローワークに相談する提出する前に相談できます。→ どこに相談するか
確認の順序
書類を求められたら
- 選考の段階か、内定後かを確かめる
- 使い道を聞く
- 戸籍謄本・抄本が求められていないか(注記が「該当します」と明記)
- 住民票なら、本籍の記載が省略できるかを聞く
- 現住所の略図が求められていないか
- 健康診断書に合理的・客観的な必要性があるか
- 求められた文面をそのまま保存する
→ 聞かれてはいけない14事項/面接で聞かれたとき/出せと言われた書類/健康診断と既往歴/不採用のあとの応募書類/どこに相談するか
確認に使った一次情報
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「求職者の皆様へ」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/jobseekers.html
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「よくある質問」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 個人情報保護委員会 FAQ Q9-20https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q9-20/
よくある疑問
もう戸籍謄本を出してしまいました。
入社手続きなら戸籍謄本を出してよいのですか。
市販の履歴書に性別欄がありました。
応募サイトの入力画面に本籍の欄がありました。
卒業証明書は問題ありませんか。
提出を断ったら選考が止まりました。
採用選考の法令ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
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