いちばん多いのは、家族についての質問
厚生労働省がハローワークで把握した854件のうち、最も多いのが「家族に関すること」の質問です。しかも多くは、面接の場を和らげようとして出てきます。だから身構えていても不意を突かれる。公表されている事例をそのまま並べ、その場で何ができるかを整理します。
厚生労働省が挙げた5つの事例
公正採用選考特設サイトの「求職者の皆様へ」に、「その質問、不適切です!」という見出しで並んでいるものです。
採用面接時に多い不適切な質問・指示事例(厚生労働省・原文)
| 事例 | どの区分に当たるか |
|---|---|
| 次の面接に進む前に、戸籍謄本を提出してください | (a)本籍・出生地 |
| ご家族のお仕事について教えてください | (a)家族に関すること |
| 大きな家にお住まいのようですが、働く必要があるのですか | (a)住宅状況 |
| 先日行われた選挙には行きましたか | (b)支持政党 |
| あなたの購読新聞や愛読書があれば教えてください | (b)購読新聞・愛読書 |
出典:厚生労働省 公正採用選考特設サイト「求職者の皆様へ」。区分の対応づけは、14事項の記載と照らして整理したものです。
5つのうち3つが(a)本人に責任のない事項、2つが(b)本来自由であるべき事項です。並べ方に意図があります。
なぜこの5つなのか
実際の面接で出やすい形になっているからです。どれも、話の流れの中で自然に出てくる言い方をしています。
事例の言い方と、聞かれる場面
| 事例 | 出てくる場面 |
|---|---|
| 次の面接に進む前に、戸籍謄本を提出してください | 書類の追加提出を求められるとき。事務手続きの顔をしている |
| ご家族のお仕事について教えてください | 面接の冒頭、緊張をほぐす雑談として |
| 大きな家にお住まいのようですが、働く必要があるのですか | 履歴書の住所を見ながら。志望動機の確認の形をとる |
| 先日行われた選挙には行きましたか | 時事の話題として |
| あなたの購読新聞や愛読書があれば教えてください | 「勉強していますか」という質問の形をとる |
この対応づけは、事例の文面から整理したものです。厚生労働省が場面まで指定しているわけではありません。
いちばん厄介なのは「あなたの購読新聞や愛読書」です。自己啓発の話として答えてしまいがちですが、厚生労働省は「購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること」を(b)思想・信条にかかわる事項として挙げています。
判断に迷う質問
14事項に当たるかどうかがはっきりしない質問もあります。基準は「本人の適性・能力に関係があるか」です。
こう聞かれたら、どう考えるか
「ご家族は転勤に賛成していますか」
転勤の可否を確認したいなら、本人に「転勤は可能ですか」と聞けば足ります。家族の意向を聞くことは(a)家族に関することの把握に近づきます。「私自身は可能です」と答えることはできます。
「ご自宅から通えますか」
通勤時間の確認は職務遂行に関係します。ただし「間取り」「部屋数」「住宅の種類」に話が及ぶと(a)住宅状況の把握に当たります。通える/通えないで答えれば足ります。
「休日は何をしていますか」
それ自体は14事項に挙がっていません。ただし答えの中に宗教・支持政党・社会運動が出ると、そこから先は(b)に触れます。答える範囲は自分で決められます。
「健康状態に問題はありませんか」
厚生労働省は「応募者に既往歴を確認する行為や健康状態の確認・告知書を提出させる行為なども含む」と書いています。→ 健康診断と既往歴
「現住所の略図を書いてください」
厚生労働省は(注2)で「住宅状況や生活環境などを把握したり、身元調査につながる可能性があります」と明記しています。→ 出せと言われた書類
その場でできること
厚生労働省は「答えなくてよい」とは書いていません。書いてあるのは、事業主への周知・啓発と、相談先です。だからここから先は「どう振る舞えるか」の整理であって、権利の説明ではありません。
面接の場での順序
- 答えるかどうかを、その場で決めてよい沈黙しても、答えても、聞き返しても構いません。どれを選んでも、あとから相談できます。
- 質問の言葉を頭の中で繰り返すあとで書き留めるためです。言い換えずに、そのままの言葉を覚えてください。
- 答える場合は、仕事に関係する範囲に絞る「転勤は可能です」「通勤は40分です」のように、聞かれたことより狭く答えるのは自由です。
- 面接が終わったら、すぐ記録する記憶は数時間で崩れます。建物を出たところで書いてください。
聞き返す言い方
角を立てずに聞き返す形があります。ここに挙げるのは一般的な言い回しの例であり、厚生労働省が示したものではありません。
聞き返しの例
| 言い方 | 何が起きるか |
|---|---|
| 「その点は、業務のどのあたりに関わりますか」 | 合理的な必要性があれば説明が返る。返らなければ、それが記録になる |
| 「差し支えなければ、私自身のことでお答えしてよいですか」 | 家族の話を本人の話に戻せる |
| 「その質問にどうお答えすればよいか迷っています」 | 面接官が気づいて引くことがある |
聞き返すことで不利になるかどうかは分かりません。その場の判断であり、聞き返さない選択も同じように正当です。
記録の取り方
面接の直後に書くこと
- 日付と時刻(面接の開始と終了)
- 企業名と、面接した人の役職・人数(名前が分からなければ「男性2名」でよい)
- 面接の形式(対面/オンライン/録画/AI面接)
- 聞かれた質問を、そのままの言葉で
- 自分がどう答えたか
- そのやり取りの前後で、面接の雰囲気が変わったか
- 応募書類やエントリーシートに同じ事項の欄が無かったか
録音については、企業の施設内でのルールがあります。ここでは推奨も否定もしません。メモで足ります。
面接のあとにやること
記録を取ったあとの選択肢は3つです。
面接のあとの3つの道
| やること | 向いている場合 |
|---|---|
| ハローワーク・都道府県労働局に相談する | 不適切な選考が行われていることを行政に伝えたい |
| 転職エージェントの担当者に伝える | エージェント経由の応募。企業への確認を間に入ってもらえる |
| 何もしない | 選考を続けたい。記録だけ残しておけば、あとから相談できます |
3つは排他ではありません。記録を残したうえで選考を続け、あとで相談する、という順序も取れます。
面接のやり取りを、担当者に間に入ってもらう
エージェント経由の応募では、企業への確認や辞退の連絡を担当者に任せられます。
- s
- h
- i
- g
- o
- t
- o
確認の順序
聞かれたと感じたら
- その場では答える/聞き返す/流すのどれでもよいと知っておく
- 面接の直後に、質問をそのままの言葉で書き留める
- 14事項のどれに当たりそうかを確かめる
- 応募書類・エントリーシートも見返す
- ハローワークか都道府県労働局に相談する
- エージェント経由なら担当者にも伝える
→ 聞かれてはいけない14事項/面接で聞かれたとき/出せと言われた書類/健康診断と既往歴/不採用のあとの応募書類/どこに相談するか
確認に使った一次情報
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「採用選考時に配慮すべき事項」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「求職者の皆様へ」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/jobseekers.html
- 厚生労働省 公正採用選考特設サイト「よくある質問」https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 個人情報保護委員会 FAQ Q9-20https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q9-20/
よくある疑問
答えないと不採用になりますか。
オンライン面接でも同じですか。
面接官が新人で、悪気がなさそうでした。
その企業に入りたいので、波風を立てたくありません。
複数の企業で同じことを聞かれました。
面接ではなく、内定後の面談で聞かれました。
採用選考の法令ガイドの記事一覧
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