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「違約金」と「損害賠償」は、別の話

契約期間の途中で辞めたいと伝えたときに出てくる話には、性質の違う二つが混ざっています。あらかじめ金額を決めておく「違約金」と、実際に生じた損害の「賠償」は、法律上まったく別の扱いです。ここを分けないまま話をすると、言われるままになります。

本ページは法令の一般的な内容を整理したものであり、法律相談・法律事務ではありません。実際の可否は契約内容と個別の事情によって変わります。判断に迷う場合は、弁護士、労働基準監督署、都道府県労働局の総合労働相談コーナーにご相談ください。
このページの内容
  1. 二つを分ける
  2. 1年を超えているかで変わる
  3. 「やむを得ない事由」とは
  4. 伝え方と進め方
  5. 派遣の場合に特有の事情
  6. 相談先
  7. よくある疑問

二つを分ける

違約金と損害賠償は別のもの

違約金・賠償額の予定実際の損害の賠償
何を指すか「途中で辞めたら◯万円」とあらかじめ決めておくもの退職によって現実に生じた損害の穴埋め
法律上の扱い労働基準法16条が、労働契約についてこれを定めることを禁じている禁じられてはいない。ただし請求する側が損害と因果関係を示す必要がある
契約書にあったらその条項自体が法に反する定めとなる条項の有無にかかわらず、実際の損害の立証が要る
よくある言われ方「契約書に書いてある」「代わりの人を入れる費用がかかる」

労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めることと、賠償額をあらかじめ決めておくことを、使用者に対して禁じています。

つまり「契約書に書いてあるから払わなければならない」という説明は、その条項が賠償額の予定にあたるなら、前提から成り立ちません。まず、言われている金額が「あらかじめ決まっていた額」なのか「実際にかかった額」なのかを確認してください。

実際の損害の賠償については、請求する側が、損害が生じたこと・その額・退職との因果関係を示す必要があります。「代わりを探す手間がかかった」という一般的な説明だけでは、通常は足りません。

1年を超えているかで変わる

有期の労働契約は、期間が定められている以上、途中で自由に辞められるのが原則ではありません。ただし、経過した期間によって扱いが変わります。

経過期間による違い

状況根拠となる考え方実務上の意味
契約期間が1年を超える契約で、1年を経過した労働基準法附則137条により、使用者に申し出ることでいつでも退職できるとされている(高度な専門的知識等を有する者・満60歳以上の者などは対象外)期間の途中でも、申し出による退職の道がある
契約期間が1年以下、または1年を経過していない民法628条の「やむを得ない事由」があれば、直ちに契約を解除できる事由の有無が争点になる
期間の定めがない(無期)民法627条により、申し出から一定期間の経過で終了する有期とは別のルール
試用期間中試用期間は多くの場合、期間の定めのない契約の一部有期契約とは限らない。契約書の確認が要る

自分がどれに当たるかは、契約書の「契約期間」の欄で決まります。まずそこを開いてください。

試用期間中であることと、有期契約であることは別です。「試用期間だから途中で辞められない」という説明は、契約が無期であれば前提が違います。契約書で期間の定めの有無を確認してください。

「やむを得ない事由」とは

民法628条は、やむを得ない事由があるときは各当事者が直ちに契約を解除できる、としています。何がこれに当たるかは事案ごとの判断ですが、一般には次のようなものが議論されます。

議論されることが多い事情

いずれの場合も、「あった」と主張するだけでは足りず、記録が要ります。診断書、労働条件通知書と実際の勤務記録、給与明細、やり取りの記録。事由を主張するつもりなら、伝える前に集めてください。

契約形態を伝えたうえで対応範囲を確認する

有期契約か無期契約かによって、対応できる範囲は変わります。相談は無料です。

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伝え方と進め方

順序

  1. ① 契約書を開く契約期間・更新の有無・退職に関する条項を、実際の文言で確認する。記憶ではなく現物で。
  2. ② 経過期間を数える契約開始日から今日まで。1年を超える契約で1年を経過しているかは、ここで決まる。
  3. ③ 事由の有無を整理する「やむを得ない事由」を主張するなら、それを示す記録を先にそろえる。
  4. ④ 申し出は記録が残る形で口頭のみにしない。日付と内容が残る形にする。写しを手元に置く。
  5. ⑤ 金銭の話が出たら性質を確認する違約金の話か、実際の損害の話か。後者なら、内訳と根拠を示してもらう。
  6. ⑥ 引き継ぎの見通しを示す実際の損害を小さくすることは、こじれを防ぐことにもつながる。

⑤は口頭でその場で答えないでください。「内訳を書面でいただけますか」と返して、持ち帰って確認する。これだけで話の性質がはっきりします。

状況別の考え方

契約期間が3年、開始から1年半が経過している

1年を超える契約で1年を経過している状況です。労働基準法附則137条による申し出の退職が視野に入ります。契約書に一定の例外に当たる記載がないかも確認してください。

契約期間が6か月、開始から2か月

1年を経過していないため、途中解除には民法628条の「やむを得ない事由」が問題になります。事由を示す記録の有無が実務上の分かれ目です。

試用期間中だが、契約書に期間の定めがない

有期契約ではありません。試用期間中であることは、期間の定めがない契約の解約についての民法627条の枠組みを変えるものではないのが一般的な理解です。

契約書を渡されていない

労働条件の明示は使用者の義務です。まず労働条件通知書または契約書の交付を求めてください。それ自体が相談先へ持ち込む材料になります。

派遣の場合に特有の事情

派遣で働いている場合、雇用契約の相手は派遣先ではなく派遣元です。ここを取り違えると、話す相手を間違えます。

誰との関係の話か

論点相手内容
労働契約の期間派遣元契約書に書かれた期間。退職の話はここ
就業場所・業務内容派遣元経由派遣先へ直接申し入れる筋ではない
派遣先との契約派遣元と派遣先の間の契約労働者本人が当事者ではない
次の就業先派遣元契約期間中に別の就業先を紹介される場合がある

「派遣先に迷惑がかかる」という話は、派遣元と派遣先の間の契約の話であって、労働者本人の債務とは別の問題です。

派遣元から「次の就業先を探すので契約は続けてほしい」と言われることがあります。これは退職とは別の提案です。就業先を変えれば続けられるのか、契約そのものを終えたいのかを、自分の中で先に整理してください。

有期契約であることを前提に相談できるか確認する

有期契約・派遣・試用期間中の扱いは、運営元によって対応範囲が異なります。

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相談先

金銭の請求を示唆された場合や、話が進まない場合は、早い段階で外部に相談してください。相談したこと自体が記録になります。

公的な相談先

よくある失敗

契約書を見ずに話を始める

有期か無期か、経過期間はどうかで、使える根拠がまったく変わります。まず現物を開いてください。

金額を言われてその場で答える

違約金の話か実際の損害の話かを確認せずに応じると、後から性質を争いにくくなります。

口頭だけで申し出る

いつ何を伝えたかが残らないと、後から確認できません。

事由の記録を集める前に伝える

伝えたあとでは集めにくくなる記録があります。順序を逆にしないでください。

派遣先に直接申し入れる

労働契約の相手は派遣元です。話す相手を間違えると、話が進みません。

よくある疑問

よくある疑問

契約書に「途中退職は違約金◯万円」と書かれています。払う必要がありますか。

労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めることと、賠償額をあらかじめ決めておくことを使用者に禁じています。書かれているという理由だけで支払義務が生じるものではありません。実際の対応は個別の事情によりますので、労働局の総合労働相談コーナーなどにご相談ください。

実際に代わりの人を採用する費用を請求されました。

実際に生じた損害の賠償は、あらかじめ額を決めておくこととは別に扱われます。ただし請求する側が、損害の発生・額・退職との因果関係を示す必要があります。内訳と根拠を書面で求めてください。

契約期間が1年ちょうどの場合はどうなりますか。

労働基準法附則137条は「期間の定めのある労働契約であって、その期間が1年を超えるもの」を対象としています(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものは除かれます)。1年ちょうどの契約は文言上これに当たりません。民法628条の枠組みで考えることになります。

有給休暇は使えますか。

有期契約でも、要件を満たせば年次有給休暇は発生します。残日数を確認し、退職日までの消化について申し出てください。

退職したら失業給付はどうなりますか。

受給の可否と待期の扱いは、離職の理由と被保険者期間によります。判断はハローワークが行いますので、離職票を持って相談してください。

派遣・契約・試用期間の退職ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

本ページの前提となる制度・統計は、以下の公的機関等の公表情報で確認できます。最新の内容は必ず各機関の公式ページでご確認ください。

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